
▽過去の連載
遊びじゃないの(1)
「ナイスカット!」「ラスト20秒、ボールくるよ!」。放課後の体育館に、ひときわ威勢のいい大声が響く。
中学2年でアタッカーのエリカだ。いつもニコニコ笑顔で、後輩の世話もかってでるムードメーカー。ただ、コートに立つと、その表情は一変する。
外野から鋭いまなざしで相手を観察し、隙あらば剛速球をお見舞いする。試合の時の「一撃必殺オーラ」はまるで歴戦のスナイパーのようで、正直、敵に回したくないと思う。
その強さが悩み、苦しんだ末に手に入れたものだと知っていれば、なおさらだ。
2018年4月、中1の彼女が部活体験に現れた時の衝撃は今も忘れられない。
元気いっぱいなショートカット。いかにもスポーツ万能といった感じの少女は、聞けば小学1年からドッジボールをやっていて、ラグビーや空手も得意なのだという。
ほう。では、お手並み拝見。まずはボールを投げさせてみた。
「びゅんっ!」
「えっ?」
長くしなやかな右腕から放たれたボールは、ただの一度で私たち全員を黙らせた。
試しに至近距離からエリカに向かってボールを投げても難なくキャッチ! その日から彼女はドッジボール部のエースアタッカー候補になった。
だけど、期待とは裏腹に待ち受けていたのは
半端ないボールを投げられるはずなのに、試合形式になると全然ダメ。仲間からパスを受けても、アタックするかどうか迷い、結局、パスに逃げる。本来のアタック力を全く発揮することはできなかった。
原因はプレッシャー。「もし自分の投げたボールが相手に取られて、みんなに迷惑をかけたら……」。自分のせいでボールを失うのが怖かったという。
将来のエース候補は結局、試合でただの一度も外野から敵に当てることができないまま、中1の1学期を終えた。
どん底にいた彼女を救ったのは、同級生のミナが中1の夏合宿で放った一言だった。
「自分らしく、もっとアタックしなよ。勝ちたいんでしょ」
小学校時代からの友人でもあるミナは、姉の影響で中学のドッジボール部に入った。もともと学校の授業ぐらいしか経験がないはずなのに、最近、同じアタッカーとしてめきめき腕を上げている。迷っているうちに、ライバルの足音はすぐ背中の後ろまで迫っていた。
私は誰にも負けたくない。いや、勝ちたい――。エリカの闘争心に火がついた。
彼女が出した結論。それは「ひたすら攻めること」だ。ボールを受ければ、よほど無理でなければ、相手を狙う。ボールを取られるかも? それなら、取られないボールを投げられるようになればいい。
夏合宿以降、毎晩の筋トレとランニングがエリカの日課になった。投球フォームもお父さんに動画で撮影してもらい、こまめに修正を繰り返す。すべては相手を圧倒できる速くて強いボールを投げるためだ。
あれから1年半。彼女は今、「私によこせ」「私が決める」ってオーラをびんびん発するどう猛なアタッカーに成長した。プレッシャーを吹き飛ばす、努力に裏打ちされた自信。チームを救うエースの称号は、それを持つ者にだけ与えられる。(高校生の登場人物は全て仮名です)
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