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男だらけの舞台で(2) - 読売新聞

 空中分解寸前だった逗子開成高校演劇部に昨春、ヨット部から転部した高1の白田は入部早々、次々と部活改革案を打ち出してきた。反発する先輩部員もいたが、部長の俺、東山は絶対に折れない白田の姿勢に少しずつひかれるようになった。

▽過去の連載
 男だらけの舞台で(1)

 「憲法を制定する!」

 去年の春、高1の新入部員・白田がまず言い放ったのは、部内にルールを作ることだった。

 〈1〉部活中はスマホを使わない
 〈2〉基礎練を始める時間は守る
 〈3〉遅れる時は連絡する――など、どれも当たり前のことばかりだったが、“部活崩壊”状態にあった当時の俺たちには、それすらできていなかった。

 「まぁ、いいんじゃない?」。鼻息荒く訴える姿に気おされて同意したが最後、白田は早速、稽古中にスマホをいじった2年の南からスマホを没収する強権を発動し、みんなを震え上がらせた。

 会議も頻繁に招集された。部のグループLINEに白田から「会議やりますよ!」の投稿があれば、全員集合。後に部内で「白田公会議」と呼ばれることになる鳥沢先生公認の会議だ。憲法を始め、あらゆる部の運営方針、ルールがこの会議で決まっていった。

 白田はなぜそこまで熱くなれたのか。それは逗子開成に入学した中1の春にまでさかのぼる。

 その年の新入生歓迎公演で、当時中2の俺らが演じたのは、今にもつぶれそうな高校の歴史研究部を舞台にしたドタバタ劇。ドカンドカンと笑いをとれたのを俺もよく覚えているけど、白田も「演劇って面白い」と思ってくれた一人だったらしい。自分に限界を感じてヨット部を辞めたとき、まず思い浮かべた次の目標は、舞台で躍動する俺たちの姿だったという。

 ただ、そこで待っていたのは、想像していたキラキラした世界とはかけ離れたよどんだ空気と人間関係だった。

 深い失望を感じていたある日、白田は部室の片隅でほこりをかぶっていた新入生歓迎公演の台本を見つけた。

 自宅に持ち帰って読み返すと、不思議なことが起きた。ページをめくる度に、あの日の舞台で輝きを放った俺たちの姿が鮮明によみがえってきたという。

 「もう一度、あの頃の演劇部を取り戻したい。いや、取り戻すんだ」

 こうして、白田は演劇部改革を決意した。

 厳しい規律を設けるだけでなく、白田は部員の獲得にも乗りだし、同級生を次々と演劇部に引きずり込んでいった。

 そのうちの一人がクラスメート・山岡だ。なんでも白田が国語の教科書を忘れた時、教科書を見せてもらったのがきっかけで仲良くなったらしい。山岡によると、白田は何度も教科書を忘れ、そのたびに見せてあげていたという。

 俺たちはそれを聞き、最初は「白田も意外とかわいいとこがある」なんて笑っていたが、今思えば、「教科書の忘れ物」すら計画的だったのかもしれない。

 もちろん、入ってきたばかり(しかも、ヨット部からの転部組)の白田による改革に反発する声がなかったわけじゃない。一時期、「王様」「暴君」なんて呼んだヤツもいたが、絶対に折れない白田の断固たる姿勢に俺たちは自然とひかれていった。

 誰もが心の底では思っていたのかもしれない。もう一度、あの頃の演劇部を取り戻したい――って。

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June 02, 2020 at 08:00AM
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