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コロナ禍で再確認した、都市部のコミュニティにおける「公園」という存在の重要性 - @DIME

 ある程度歩くと汗ばむ季節になってしまったが、まだ猛暑の夏は来ていない。多少の距離ならまだまだ歩けるのだが、アスファルトとコンクリートに囲まれた都会の街は一度温められれば熱が篭りきりになる。今年の夏もどれほどの暑さになるのか、昨年の猛暑を思い出しただけで汗が噴き出そうだ。

 所用を終えて夕方の駒込の街を歩いていたのだが、駅近くにある公園には好印象しかない。たとえ狭いちょっとした敷地でも、緑がある公園が駅前にあれば思わず中に入って緑の木立の中で涼をとりながらひと息つきたくもなってくる。実際に缶コーヒーを片手に立ち止まってスマホを眺めているサラリーマンの姿もあれば、カラフルな滑り台で子ども遊ばせている親子連れもいた。まさに都会のオアシスだ。どこかで飲み物でも買ってきてベンチに腰掛けたくもなったが、今はひとまずどこかで遅い昼食をとるのが先決だった。

 駒込には六義園という広い都立公園があり、桜の季節や紅葉の時期には多くの見物客が集まるが、自然にふれあってゆっくりと過ごすには、そうした時期よりも今のような中途半端な季節のほうがよいのかもしれない。本格的な夏を迎える前に1度行ってみてもよさそうだ。

 もちろんそうした大きな公園ではなくとも、日常の生活の中でこうした小さな公園でホッと一息つくのもよい。しかし夏本番になってしまえばそれどころではなくなってしまうだろう。とすれば公園で過ごす時間はますます貴重な体験になる。

大衆食堂で誘惑に負け刺身の盛り合わせで一杯

 予期せず見かけた“都会のオアシス”に後ろ髪を引かれつつも、JR駒込駅北口までやってきて目の前の本郷通りの横断歩道を渡って左折する。通り沿いを少し歩いたところにある大衆食堂に入ることにした。ここはいつ来ても賑わっている人気店で、この時も店内は満席に近かった。

 巣鴨を中心に都内で数店舗を構えるこのお店は、エビフライやトンカツなどの揚げ物や、魚料理などが売りの大衆食堂だ。メニュー的にはごく普通の店ともいえるが、料理のクオリティが高くリーズナブルで地元の人々を中心に定評のある人気店である。

 入店する前は遅い昼食として何らかの定食にしようとも考えていたのだが、もう夕刻でもあり誘惑には負けてしまった。思わず刺身の盛り合わせと瓶ビールを注文してしまう。さらにアジフライ一尾を単品でオーダーする。

※画像はイメージです

 刺身のタコぶつとマグロは予想通りの美味しさだが、普段はあまり食べないサザエのコリコリした食感はたまに食べるといいものである。この歯ごたえで海の幸を頂いているという臨場感が高まるというものだ。

 本日の仕事を放棄すると決めたわけではないが、最終手段としては明日早めに起きて取り組めばリカバリーはできるだろう。こんなことならさっきの公園で缶ビールを片手に“0次会”をしてみてもよかったかもしれない。しかし飲食を禁止している公園も少なくないので、そのへんは事前に確認しなければならない。

 お花見のシーズンでは桜を眺められる公園は“宴会場”と化してしまう日本だが、世界に目を転じてみればアメリカのニューヨークなど、公園などの公共場所での飲酒を禁じている地域や国もある。公園でお酒が飲めることに日本の酒飲みたちは感謝すべきなのだろう。

※画像はイメージです

都市部のコミュニティにおける公園の重要性

 もちろん飲酒するしないにかかわらず、公園の存在は我々の暮らしを豊かにするものだ。特に現在、感染症の世界的な影響下の中で、活発な人的交流は難しい中にあっても、公園を訪れるなどして自然に触れられれば心身の健康を保ちやすくなるのだろう。

 時間に追われ、人混みの中で過ごすことが多い都市部の生活の中では公園はまさに“癒しスポット”である。カフェや飲食店、入浴施設やマッサージ店など都市の中にはさまざまな“癒しスポット”があるが、公園の癒しぶりには何か特色があるのだろうか。なぜ公園はこれほどまでに我々の心を癒し、ホッと一息つかせてくれるのか。

 最新の研究ではコミュニティの中で公園が地域住民にどのようなメリットをもたらしているのか詳しく検証していて興味深い。公園は人々を癒すだけでなく、生活の充実感や社会参加にも関係するきわめて重要な役割をはたしているというのである。

 スイス・ジュネーヴ大学、バーゼル大学、フィリピン・マニラ大学などをはじめとする研究チームが2020年4月に「The Journal of Public Space」で発表した研究では、アジアの4都市の人々の暮らしぶりを分析し、公園が社会生活を守る役割をはたし、その地域の人々の生活の満足度(well-being)を高めていることを報告している。


 ジュネーブ大学(UNIGE)が率いる国際チームは、アジアの4つの巨大都市に焦点を当てた研究で、緑地が都市生活者の福祉にどのように貢献しているかを確認しました。この調査は、社会が対応する能力を持つ9つの「保護的ニーズ」のリストに基づいています。公園は、これらのニーズのほとんどすべてをさまざまな程度で満たしていることを示しています。特に「快適な環境での生活」、「人としての発展」、「コミュニティの一員」の3つが際立っています。

 また公園は、社会階級に関係なく、個人の福祉に重要な役割を果たすこと、およびショッピングセンターなど人々が出会う他の場所に置き換えることはできないことも示しています。これらの公園が閉鎖されると(COVID-19の大流行時など)、幸福度の不平等が激しくなります。

ジュネーブ大学のプレスリリースより引用


 アジアの4つの都市とはインドのチェンマイ、シンガポール、フィリピンのマニラ、中国の上海である。これらの都市において公園は社会生活上、きわめて重要な機能を持ち、人々の暮らしになくてはならないものであると結論づけられている。

 また研究では公園が果たす重要な役割として「社会的包摂(social inclusion)」を強調している。公園を訪れることは、そのコミュニティの一員であることを意識させてくれるというのだ。公園が地域社会の“絆”になっているともいえるのだろう。意外な話のように思えるかもしれないが、確かに公園はたとえ一人でいたとしても孤独感を感じることはないかもしれない。

 公園がなかったり、あるいは非常に少ない街は歩いていても味気がない印象を受ける。商店街が充実していたり、娯楽施設が多かったりと、外からやって来る人々には魅力的な街であっても、そこに住む人々にとっては公園はより重要な意味を持ってくるだろう。

 公園が利用できる生活に感謝しなければならないともいえるだけに、ルールを守りモラルある利用が求められていることはいうまでもない。

黙って飲んですぐ帰る“公園一人酒”のすすめ

 ご存知のように今年のお花見は感染症の影響もあり多くの公園で“自粛”が求められた。もちろんこれは今年の特殊な事情によるものだが、引き続き来年も自粛が求められる可能性が絶対にないとはいえない。

 花見でアルコールが飲めなくなる日など想像したくないとも言えるのだが、別の方向から路上飲酒や屋外飲酒そのものを考え直す動きもある。昨年はあの悪評高い(!?)渋谷の“ハロウィーン”の時期に渋谷区は駅周辺の地域での路上や公園での飲酒を禁止する条例を初めて制定したのは記憶に新しい。

 またこれに先駆けて神奈川県逗子市や鎌倉市では、海水浴場の浜辺での飲酒を禁止にする条例を定めている。こうした飲酒禁止条例はもちろん、残念ながらモラルに逸脱する行為を受けてのものだ。

 都市部の地域社会を豊かにする公園を、規則でがんじがらめにされた場所にはしたくないものだが、ルールを無視しモラルを欠いた利用者が増えれば規制せざるを得なくなる。将来も花見酒が飲めるように、普段は“公園一人酒”で5分ほど立ち飲んですぐに帰るのがよいのではないだろうか。もちろん缶やビンは持ち帰るか、あれば分別ゴミ箱に入れるのは当然だ。公園で飲める幸せを奪われるようなことがあってはならないのである。

 感染症の影響下の中で、できるかぎり“3密”を回避することが求められているが、その点で屋外施設である公園は対人コミュニケーションにおいて感染リスクは多少なりとも低くなるだろう。もちろん応分の“ソーシャルディスタンス”が前提だ。そしてなにも人的交流がなくとも、公園の中でちょっとした緑に囲まれて外の風を浴びるだけでもいい気分転換になる。その時右手に冷えた缶ビールを持っていればなおのこと……。

文/仲田しんじ

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July 26, 2020 at 04:46PM
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