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遊びじゃないの(3) - 読売新聞

▽過去の連載
 遊びじゃないの(1)(2)

 コート上でひときわ目を引く身長約170cmの(りん)とした立ち姿、どんな時も冷静なプレーっぷり。彼女を初めて見た人は驚きを隠せずに言う。

 「彼女、ホントに中2?」

 アタッカーのミナのことだ。

 攻撃の選手といっても、剛速球で相手をねじ伏せる同学年のエリカとはタイプが違う。

 簡単に言えば、頭脳派の司令塔。「みんなで支え合うのが好き」といい、内野に陣取り、外野とパス交換をしながら、まるで詰将棋のように相手の陣形を崩していく。

 個人技もすごい。相手ボールの時は巧みにボールをかわしつつ、相手の陣形が綻んだと見るやボールをキャッチ。素早いカウンターで相手を倒す。

 ミナとエリカはまさに今をときめく「ゴールデンコンビ」。ただ、先輩として2人を見てきた私からすれば、ミナがここまでの存在になるなんて、想像だにできなかった。

 ミナのお姉さんは去年、卒業した部のOB・ミカ先輩。ミナも最初は「姉を見ていて楽しそうだった」という軽いのりでドッジボール部に入った。

 遊び感覚で入ってきた中1には洗礼が待っている。360度どこから飛んでくるかわからない剛速ボール、秒単位でめまぐるしく変わる攻防――。一瞬たりとも気が抜けない時間が続き、練習が終わると頭も体もヘトヘトになる。

 ただ、ミナにとって一番の衝撃は、小学校からの友人であるエリカの存在だった。

 もともとドッジボールを本格的にやっていたらしく、入部したてなのに、剛速球をビュンビュン放ち、キャッチもうまい。アッという間でスーパールーキー的存在になってしまった。

 なにより厄介だったのは、「背が高くて、攻撃力がありそう」という理由で、エリカと同じ、アタッカーを命じられたこと。ハナからレベルの違うライバルとの競争を強いられることになり、さすがに(へこ)んでいた。

 普通なら諦めてしまいそうな状況。ただ、ミナは違った。しばらくすると「エリカには負けない」と闘志に火をつけたのだ。

 ミナが始めたのは「観察」だ。アタックのうまい先輩の動きを目で追う。参考にしたのは、4学年上のオオソノ先輩。エリカほどすごいボールを投げるわけではないけど、確実性が高い。

 なぜあんなに相手を倒せるのか。よく見ていると、先輩のすごさは冷静な判断力だと分かってきた。攻めるときでも、攻められているときでも、敵の動きをよく見ている。しかも先々を予測しながら動いているから、プレーにムダがない。

 「これだ! このプレーなら勝てる」。ミナはそれから毎日、目と頭と体をフル回転させ、練習にのぞむようになった。

 今では「相手の攻撃パターンが手に取るように分かるようになった」というミナ。中2ながら、司令塔としてパス回しに加わり、エリカや上級生たちに気持ちよく“仕事”をさせてくれる。そして、エリカを救ったあの一言。あれも観察していたからこそ気づけたことだろう。

 性格もプレーも全然違う2人はいつしか、部活帰りのバスで反省会を開くようになった。それでも足りずに、帰宅後もSNSで話し込んでいるというから、どれだけお互いが好きなんだという感じだけど……。最高のライバルって、こういう関係を言うんじゃないかって、私は最近、思っている。(高校生の登場人物は全て仮名です)

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