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男だらけの舞台で(4) - 読売新聞

 鳥沢先生が書いた最高のオリジナル台本「ケチャップ・オブ・ザ・デッド」と共に大会に臨むことになった演劇部。部長の俺、東山と仲間たちは様々な課題と向き合い、戦いながら成長していった。

▽過去の連載
 男だらけの舞台で(1)(2)(3)

 高校演劇の戦いは丸1年続く長丁場だ。ただし、地区大会→県大会→ブロック大会(俺たちなら関東大会)→全国大会と続く階段で脱落すればそこでおしまい。

 これまでうちの最高成績は県大会。まずは関東大会出場が目標になったのだけど……。

 「お前ら! 全然、声が出てないぞ!!」

 部が一つにまとまった勢いそのままに地区大会を突破した直後、鳥沢先生は変わった。一言で言えば容赦なくなった。

 ようやく真面目に稽古するようになったとは言え、1年近くもまともに練習をしていなかった俺たち。演劇の基礎である発声すらおろそかになっていた。

 地区大会はそれでもなんとか乗り切れたが、大きなホールで行われる県大会ではそうはいかない。というわけで、県大会までに課されたのは、発声と滑舌を鍛える基礎練“千本ノック”。おなじみの滑舌練習「アメンボ赤いな。あいうえお」からやり直すことになったのだ。

 演劇の発声は腹式呼吸が基本で全身を使う。この時期はホント、体育会系顔負けのハードな日々が続いたが、失われた時間を少しでも取り戻すには、遠回りしてでもやるしかない。

 ちょっとキザな言い方をすれば、俺たちは腹をくくったのだ。本気で勝ちに行くと。

 「やっぱり先輩はすごい」

 1か月後の県大会。舞台袖で演技を見守りながら、演出の白田は胸を熱くさせていた。

 男子ならではのビリビリ伝わる野太い声量、絶妙のコンビネーションが生み出すテンポ良い展開、そして会場でドカンドカンと起きる笑いの渦。3年前の新入生歓迎公演で白田が感動した演劇部の姿がそこにあった。

 「先輩、すごかったっす」

 「なんだよ、お前、急に。気持ち悪いな」

 そんな軽口を交わしながら、待った結果発表――。

 「最優秀賞 逗子開成高校!!」

 初の関東大会進出を決めるコールにみなでハイタッチを交わしたものの、浮かれるものは誰もいない。「大学生3人の役の関係性がしっかり表現できていない」という審査員の厳しい講評の通り、ここまで俺たちが時間を費やしてきたのは、まず県を勝ち抜くための基礎練習。それぞれの役者が自分の役を突き詰める余地はまだまだあった。

 3人の大学生とゾンビとの出会いを描く俺たちの演目「ケチャップ・オブ・ザ・デッド」は物語が進むうちに、ゾンビの悲しい過去が明らかになる。ゾンビの正体は人生に嫌気がさし、自殺した孤独な青年。もう一度、死にたいとさまよい続けている時、自分を殺してくれそうな大学生3人と出会ったのだった。

 関東大会までの間、ゾンビ役の中井は「ゾンビの動きと人の孤独」について考え続けたという。大学生役の南は脚本を何度も読み直し、「人間の感情を動かす根源」に思いをはせた。同じく大学生役の西野は「自分の個性とは何だ」と自問自答し続けた。

 そして、演出の白田と舞台監督の北出はクライマックスの演出を修正した。わさわさゾンビが登場し、まさにゾンビのパンデミック状態に!!

 ぶっ飛んでると言えば、ぶっ飛んでるけど、これはそれぞれが自分の役割を突き詰める中で見つけた自分なりの突破口。関東大会で最高の演技を見せた俺たちは、創部初の全国切符をつかんだのだった。

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June 04, 2020 at 08:00AM
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