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響け なまはげ太鼓(4) - 読売新聞

 念願のなまはげ姿になれたユウキだが、面で視界の大半が奪われたり、ケラが重くて動きづらかったりして違和感だらけ。自信を失いそうになる。だが、先輩の演奏の映像を見て気持ちを奮い立たせ、さらに練習に励むのだった。

▽過去の連載
 響け なまはげ太鼓(1)(2)(3)

 ユウキが“その人”に会ったのは、1年生の12月。あるテレビ番組に出演したときだ。なまはげにゆかりのある人が出演する企画で、男鹿海洋高校からは、物おじしないユウキが出演することになった。

 その人のことは、男鹿地域の誰もが知っている。なまはげにかかわっているなら特に。

 収録現場では、すぐにわかった。黒い作務衣(さむえ)姿で長靴履き。色つきサングラスをかけていた。少し怖そうな雰囲気を漂わせていたのが、その人、センシュウさんだ。

 なまはげの面を作って40年以上。ただ一人の面彫師だ。使われている面はどれも、センシュウさんかその父の手によるものだと言って間違いない。

 60歳を超えてなお、体全体から気迫がみなぎっているようだ。これがオーラというやつか。ユウキは恐る恐る「初めまして…」と声をかけた。

 センシュウさんの顔がゆっくりユウキに向くと、「お~、お前、海洋か!」とまばゆいばかりの笑顔になった。実は、気さくな人で、「自分の面は欲しくないか。作ってやるよ」とも言ってくれた。

 だが、ユウキは「俺、実力も経験もまだまだなんで!」と断るしかなかった。まだ、初舞台も踏んでいなかったのだ。

 それから1か月ほどたった1月、センシュウさんからスマホに電話がかかってきた。「そろそろ作る気になったか」

 あのセンシュウさんが直々に声をかけてくれただけでなく、「将来を担う若い人だから」と値引きもしてくれた。おこづかいやお年玉をためていたからなんとかなる。

 世界に一つの自分の面を持てば、それに恥じない演奏を追求することにもつながるのでは――と考え、決断した。

 それから間もなく、部内でオーディションがあった。イベントなどで演奏するのは12人。それには部員同士の競争に勝たなければならない。

 先生が合格者を発表していき、ユウキの名が呼ばれた。初めての舞台だ! 興奮しすぎて「う…あ…ハイ!」と変な返事をしてしまった。

 いざ選ばれると、うれしさだけでなく、プレッシャーと不安に襲われた。

 本番まで1週間、気合の入った練習ができたが、舞台上では緊張しすぎて、納得できる演奏ができなかった。「ミスってはいけない」という思いが体を縮こまらせていたのだ。

 センシュウさんから、面が完成したと連絡があったのはそれから1か月後。2月下旬、男鹿市内の工房に駆けつけた。

 フタを開けたユウキは、鮮やかな赤に目を奪われた。「誰よりも明るい赤にしてください。とにかく目立つ真っ赤で」とオーダーした通りだ。

 黒目の周囲も赤く縁取られ、荒々しさを感じるゴツゴツした表面の仕上げも気に入った。

 「かぶってみれ」。渡された面をかぶって鏡の前に立ったユウキは、しばらく自分に見とれてしまった。

 オリジナルの面がある部員は毎年、3年生に1人いるかいないか。それなのに、初舞台でミスを悔いるばかりのユウキが面を手にしたのだ。

 「この面にふさわしいなまはげになる」と、これまで以上の努力を誓った。

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