河北春秋(8/6)：仙台市青葉区の錦町公園に、小さなブロンズ… - 河北新報

　仙台市青葉区の錦町公園に、小さなブロンズ像がある。膝をついた少女が、重ねた手のひらに載せた１羽の折り鶴を見つめている。題名に「いのり」とあるように、瞳にも深い祈りが宿っている。１９９４年、宮城県原爆被害者の会が設置した▼折り鶴は今や世界平和の象徴になっている。きっかけは、２歳の時に広島市で被爆し、白血病のため１２年の短い生涯を終えた佐々木禎子さん。病気の回復を祈って折り続けたことが書籍などを通して知られるようになった。広島平和記念公園にある原爆の子の像のモデルになった▼７５年前のきょう、広島に原爆が投下された。当時、広島市にいた約３５万人のうち、約１４万人が爆風や熱線、放射線で亡くなった。今も後遺症に苦しむ人々がいる▼核を巡る状況を見ると、悲観的にならざるを得ない。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は核で永遠に国を守ると演説。日本は被爆国でありながら、国連で採択された核兵器禁止条約への署名を拒否している。被爆者の高齢化やコロナ禍で継承活動も曲がり角を迎えている▼これまでに折られてきたおびただしい数の鶴は、現実の前では無力なのかもしれない。それでも、私たちは平和への祈りを込めて鶴を折り続けるだろう。それが核のない世界への一歩だと信じて。（２０２０．８．６）　

2020年08月06日木曜日

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