天の川銀河が、チリのラ・シヤ天文台の望遠鏡の上空に広がっている。 ここは、天文学者が気化する惑星を見つけた場所だ。
ESO/José Francisco Salgado (josefrancisco.org)
- 天文学者たちは新しい技術を使って、ゆっくりと蒸発している計6個の惑星を持つ3つの星を特定した。
- これらの太陽系外惑星のうち3つは、かつては海王星ほどの大きさだったと思われる、恒星の熱によって物質を放出しているスーパーアースだ。
- ガスの中に閉じ込められた星を探すことで、天文学者は望遠鏡をより効率的に使うことができる。
蒸発する6つの珍しい惑星が、惑星を探索する新たな方法を科学者にもたらした。
新しい惑星探査法では、ガス雲に囲まれた星を探す。このような恒星は、軌道上に惑星を持っている可能性が高い。その惑星はあまりにも接近していて、恒星の熱でゆっくりと蒸発してガスを放出しているからだ。そのプロセスはアブレーションと呼ばれている。
イギリスのオープン大学の天文学者のグループは、ガス雲に囲まれた3つの恒星を観測し、恒星を回る太陽系外惑星を発見した。科学誌「Nature Astronomy」に掲載された3つの論文で、今回の発見を詳述している。
「これは惑星の存在を予測するのに、これまでで最も成功した方法だ」と、NASAの太陽系外惑星科学者、ジェシー・クリスチャンセン(Jessie Christiansen)氏はBusiness Insiderに語っている。クリスチャンセン氏は、今回の研究には参加していない。
さらに、これらの蒸発する惑星が残したガスの雲は、惑星の組成や構造に関する前例のないデータを科学者に提供する可能性がある。
「これらは非常に高品質で詳細な情報が得られる惑星だ」と、今回の研究を率いた天体物理学者のキャロル・ハスウェル(Carole Haswell)氏はBusiness Insiderに語った。
「そして、銀河系における一般的な惑星とはどのようなものかという全体像を形成する上で、特に有益だ」
ネプチュニア(海王星の)砂漠
海王星の大暗斑と白い雲。700万km離れた位置からボイジャー2号が撮影。
NASA/JPL
恒星に近いところには岩の惑星が形成されるゾーンがある。科学者たちは、このゾーンで地球の約4倍の大きさと17倍の質量を持つ海王星(ネプチューン)クラスの惑星を発見していないことから、これを「ネプチュニア砂漠」と呼んでいる(ただし、5月、このゾーンで初めて海王星くらいの大きさの惑星を発見された)。
今回新たに発見されたこれらの蒸発する惑星は、このゾーンに大きな惑星のない理由についての手がかりを与えてくれるかもしれない。
6つの太陽系外惑星はいずれも、我々の太陽でいうと水星よりも近くを公転している。この場所では非常に温度が高いため、海王星のように気体の大気を維持することは困難だと考えられている。
「理由として考えられるのは、そこが非常に高温で、巨大な惑星の大気が加熱されて蒸発し、外側の層が失われたということだ」とハスウェル氏は言う。
我々の太陽系のイメージは、太陽からの距離と惑星のサイズの相関関係を考えさせる。
NASA
彼女は、チームが最近見つけた6つの惑星は「このゾーンの外れにある」と付け加えた。
しかし、研究者たちはいつの日か、この新しい探査方法を使って、ゾーン範囲にある蒸発する惑星を発見できるかもしれない。
3つのスーパーアースと存在すべきでない惑星
6つの新しい惑星のうち3つは岩だらけのスーパーアース(地球より大きいが、海王星のような大きさではない惑星)であり、これらはかつての巨大惑星の名残である可能性がある。
ハスウェル博士のチームは、さらに遠くを周回する、おそらく蒸発させるには遠すぎるほどの大きさの惑星と、木星の半分ほどの質量を持つ惑星も発見した。
スーパーアースの想像図。
NASA/Ames/JPL-Caltech
彼らは3つ目の恒星を観測したとき、地球の2.6倍の質量の惑星も見つけた。
「その恒星の周りを小さな恒星が回っていることが分かった。連星系が見つかるとは思っていなかったから驚いた」とハスウェル氏。
天文学者は2つの恒星が重力で結ばれたもの連星系と呼んでいる。天文学者の推定では、全恒星の最大85%が連星系だ。通常、連星系では、2つの恒星のうち小さい方は、恒星とみなすには小さすぎるくらいの大きさで、大きい方の星に非常に接近する楕円形の軌道を持っている。これら2つの恒星の間には岩石やガスが合体して惑星になるのに十分な空間がないほどだが、どういうわけか、このスーパーアースはそれらの間を通っている。
「惑星形成についての我々の考えをもとにすれば、この星はもともと現在見られるような形ではなかったはずだ」とハスウェル氏。
ハスウェル博士は、小さい方の恒星の軌道は、スーパーアースが誕生してから変わったかもしれないと考えている。
新しい惑星探査方法は、望遠鏡使用時間を節約できるかもしれない
チリに建設予定の欧州超大型望遠鏡(European Extremely Large Telescope :E-ELT)の想像図。
ESO/L. Calçada
深宇宙を覗くことができる高品質の望遠鏡を長い時間独占することは容易ではない。天文学者は効率的に時間を使わなければならない。アブレーションを探すことは、適切な恒星の周りで惑星を探していることを確認するのに役立つだろう。
「今回は、どのような星を探すべきかは分かっていたし、観測を惑星探査用に設計したので、望遠鏡を効率よく利用できた」とハスウェル氏は言う。
「通常よりも速く簡単に惑星を発見できている」
さらに、天文学者は蒸発する惑星の組成について豊富なデータを収集することができる。光がガス雲をどのように通過するかを分析することで、そのガスの中にどのような種類の分子が含まれているかを知ることができるのだ。
「ガスの覆いを通して、失った表層を構成していた物質を調べることができる」とハスウェル氏。
従来の解析方法で太陽系外惑星の質量と大きさも計算できる。これらすべての要素をまとめると、科学者は惑星の基本的な構造を決定することができる。地球のように溶けた液体と岩の層に囲まれた固体の核を持つのか、それとも、木星のように中心近くの液体水素の海と何kmもの厚さの渦巻く気体を持つのか。
「それによって、惑星の形成と進化に関する知見をより詳細にすることができ、我々の太陽系をこれまでよりもよく理解できる」とハスウェル氏。
彼女のチームは今年、太陽系外惑星の観測に、あと10日を費やす予定だ。彼女は恒星の周りを回っている惑星をもっと見つけたいと思っている。その後、気化する惑星を持っている可能性が高い数十個の星を観測する計画だ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)
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January 08, 2020 at 08:30AM
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